山  旅
会報 No.163
好山好山旅会
H.19.9 
 

                                             

平成19年10月例会山行計画
第一例会 10月 6日(土)~8日(月) 東北 栗駒山・神室山・虎毛山 担当者 八木
第二例会 10月 13日(土) 奥多摩 奈良倉山 担当者 吉田(博)
第三例会 10月14日(金)~17日(月) 大菩薩 小金沢連嶺 担当者 清水(ふ)
第四例会 10月27日(土) 軽井沢 白糸の滝・小浅間 担当者 清水(裕)
 
 
 
 《 日光 男体山・山王帽子山 》 
8 月4 日(土) 曇り
参加者 大田(L)、斉藤、高橋、清水(裕)、中出、佐々木 計6 名
男体山
-齊藤 記-
男体山の登山口二荒山神社は、中禅寺湖湖畔で行われている「登拝大祭奉納扇の的」の弓道大会で道着を着た人達でごったがえしていた。
本堂右脇に登拝登山受付があり、入山料として一人1000円を納めることになった。
7月31日から7日までが大祭でその後は500円になるそうだ。
一合目から 三合目は鹿よけの網が巻かれた大木の樹林帯の登りだ。
途中シラネアオイの標示があり、わき道に行ってみたが時期ではないらしく、その姿を見ることはできなかった。
三合目から四合目は治山工事用の舗装道路で、横に歩いたのはこの部分だけだ。
四合目の鳥居を右にくぐり、また急な山道に戻り、直登が続く。
樹林帯なので陽の差す事は無いが、汗が滝のようにふき出す。
五合目の避難小屋の前で休憩をとる。吹く風はさわやかで気持良い。
六合目、七合目と岩道の 直登が続く。ただひたすら我慢の登りだ。
七合目で昼食を摂る。 八合目の標示は赤い鳥居をくぐると間もなくあり、滝尾神社の小祠がある。
この辺りからが信仰の山の正念場か、中禅寺湖からの標高差1200mの直登の苦行は続く。
九合目を過ぎると細砂礫の斜面となり、足元がグズグズと崩れ登りにくい。
富士山の登山道を思い出す。 山頂は間近、一歩一歩足を運ぶ。
鳥居を二つくぐると間もなく奥宮着、その左には二荒大神の像があり、右奥の岩の上に3メートルはあるかと思われる赤錆びた宝剣が天を突いて立っている。
山頂の三角点はそのそばにあった。天気が良ければ、富士山まで見える360度のパノラマが待っているはずだったが、 残念ながら霞んでいて遠望することはできなかった。
下山は同じ道を戻る。足場の悪い岩場にはアキアカネが舞っていた。
その昔、 この山に登った時には眼下に広がる中禅寺湖に向かって、直滑降で突っ込むよ うに下りた覚えがあったが、湖は木々の切れ間から時々見えるだけだった。
今日の宿「民宿 すぎもと館」で汗を流し、湯葉づくしの料理で乾杯となった。
 8 月5 日 晴れ
山王帽子山
-佐々木 記-
昨夜 宿の窓から猿がじゃれあっている姿、初めて見てちょっと感激しちゃっ たな。
お風呂はちょっと熱いが源泉かけ流し、夜涼しく窓を開けて寝たのも久 しぶりかな。
車のエンジン音など雑音が聞こえなく静かなほっとした夜を過し、朝食もすごーく美味しくいただきました(夕食のゆば食ざんまいも美味しかっ た。ビールも最高でした)。 
当初のコースは裏男体林道から林道出会まで民宿の車で送っていただき、登るコースでしたが、二荒山神社のお祭りで一般車は入れないということでコースを変更し、逆コースの山王帽子山登山口から入ることになりました。
このコースだと、下山後の林道歩きが長く、太郎山まで行って戻ると最終バスの時間に間に合わないということで山王帽子山まで登り、あとは来た道を戻り、 戦場ヶ原散策コースに変更となりました。
宿の車でさー出発、足の調子が余り良くなく、戦場ヶ原散策コースに変更した 清水(裕)さんを赤沼茶屋の前で降ろし、宿の車で登山口まで送っていただき ました。
朝露で濡れ防止の為、スパッツ着用し、いざ山王帽子山へ、笹の合間 をぬって急な登りも有りましたが、ひと登りで山頂へ到着しました。
同じ道を下山後、戦場ヶ原へ向かいました。 うーんなんと広々と気持ちが良いこと、昨日の疲れも取れ快適、木道の完備も しっかりして歩きやすい。
男体山を横目に暫くは静かな時間が過ぎていきました。まもなく休憩に良い湧水に到着。
小学生が冷たい湧水に足を入れてとても楽しそう、気持ちいいだろうなー(足つけたかった)。 家族連れが多く、我が子を前おんぶしているお父さん、乳母車を引いているお じいちゃん……、いつもはとても静かだそうです、今日は特別かな?
昼食をするにも座る場所をさがすのも困難、バスの時間を気にしながらちょっ と急ぎ足。 暫く景色を眺めながら歩いて無事に茶屋に到着。
バスを待つ間ア イスクリームで一息。(美味しかった)。
☆ コースタイム
4日 二荒山神社(9:25)三合目(10:44~55)四合目(11:14) 五合目(11:42~50)六合目(12:12~20)七合目(昼食12:40~13:05) 八合目(13:46~55) 男体山頂上(14:40~15:00)二荒山神社(17:45)
5日 山王帽子山登山口(7:15)山王帽子山(8:15~32)登山口(9:05) 光徳牧場(10:05~25)戦場ヶ原自然研究路(昼食11:30~55)赤沼茶屋 バス停(12:35)
☆ 費 用
東武浅草 ⇔ 東武日光 5,800 円(特急片道2,900 円) 東武日光 ⇒ 二荒山神社 1,100 円(乗合タクシー) 赤沼茶屋 ⇒ 東武日光 1,400 円 民宿 「すぎもと館」 7,350 円 (登山口までの送料込み) 合計 15,650 円 


《 越後 飯士山 ・ 奥信越 佐武流山 》
8月18日(土)曇り一時雨
メンバー 八木(L)、高柳、高橋、吉田(博)、清水(ふ)、原田、竹中、池田 計8名
飯士山 
- 八木 記-
高橋さんの先導する車で登山口の先にある飯士山麓テニスコートに到着。
登山口は舗装道路を少し引き返し、「右・飯士山」と書いてある白い木柱のある場所だ。
飯士山には7本の登山道が通じ、今日は負欠岩コースを登り、山頂から同じ道を引き 返して合流地点の西峰から分かれる尾根コースに下山する予定である。
しばらくヒノキ林の中を歩き、すぐにでもスパッツを着けたくなるような草深い道が続く。
春になると周辺はカタクリに覆われるそうである。15分も進むと分岐に出合い、ここで左側の負欠岩コースの道を取る。
帰りは右側の尾根コースを下って くる。沢状の道に変わってしばらく登ると、右側に水場を示す標記があったが、こ のまま沢状を進んでもおかしくない場面だ。
様子見に水場の方向に進むとすぐ先にテープが巻きつけてあり、正規のルートはこ こで沢状の道から離れるようだ。
ガイドブックに沢奥まで進んで岩壁に突き当たる とも書いてあるが、右側の正規の道に変えてから沢状の道があったのか?
あったと すればその後沢奥で岩壁に突き当たったのかどうか、その辺りの記憶がまったく残 っていないが、もしそうだったとすれば、ここはガイドブックの通りに歩いていた ということになり、違うとすればそのまま沢状に真っ直ぐ進んでも山頂に立てると いうことらしい。
分岐から一時間ほどで負欠岩に着き、頼りないロープに身体をあずけて、この奇岩 を左側に巻いて岩稜の上部に立つ。
さらに厄介なのはここからしばらく続くスラブの登りである。
潅木に掴まりながらようやくの思いで岩場を脱し、後は急登に次ぐ 急登を経て西峰である。ガスに煙る飯士山に食指は動かないものの、ともかくも1 5分ほどで到着である。
例によって山頂で食事を終えた後写真を撮り、岩原スキー場に下っていく道に後ろ髪を引かれる思いで西峰まで引き返した。
尾根コースは急坂であり、その分下降点に達するのも早い。
途中雨に降られたことだけは余計であるが、予定通りに佐武流 山の足慣らしは終えた。
☆ コースタイム
飯士山麓テニスコート 9:25 尾根コースとの分岐 9:45 負欠岩 10;40~10:50 西峰 11:25~11:30 飯士山 11:45~12:15 西峰 12:25 飯士山麓テニスコート 14:10 
8月19日(日) 天気 晴れ
メンバー 八木(L)、高橋、清水(ふ)、原田、竹中、池田
佐武流山
- 八木 記 -
佐武流山の報告の前置きになるが、行程時間はメモに残してあるが、他は大雑把な 印象である。
メモを取れなかったのは先頭に立って歩くばかりか、山行そのものが つらくて余裕がなかった。
林道のゲート前に車を止め、さらに歩いて10分ほどでガイドブックの写真の通りのゲートに到着である。
本来ならばここに車を止めるが、中越地震によって当分この間は通行不能である。
ここからの林道歩きが途轍もなく長い。
帰りはこの道を引 き返すが、いっそう輪をかけて長く感じられ、いらだつほどだ。
1時間も経つと頭上の木々の間から朝の光が入り、緑の葉がはっきり目に映ってきた。
林道の途中で右側から檜俣川の渡渉点まで下り、それぞれ思い思いの支度を凝 らして川を越える。
やはり登山靴を脱いで越えるほかなさそうである。
対岸に渡ってから朝食を済まし、のっけから急登を歩く。
道ばたにすぐ目に付いた白い花はオ オシラヒゲソウとのこと。
カラマツ林で傾斜がいったんゆるむが、その後は急登の連続だ。
この先は記憶に残 っている印象さえも曖昧である。
山行を終えて3週間も経ち、その後他の山にも登 っているので印象がゴチャゴチャになり、ここはガイドブックの助けを借りるほかなさそうだ。
木々の間から月夜立岩、その向こうに見えるのが鳥甲山であるが、雲がかかって稜線を隠していた。
物思平を過ぎてややもすれば尾根道になり、急登は ひとまず一段落する。
この尾根は水無尾根といい、そろそろ佐武流山の尾根も見えてくる。
頭上が開けて 開放的な尾根歩きであるが、陽射しが直接降りかかるのが辛い。尾根通しから度々 南側の樹林の中に道を移すが、この時ばかりは風が通って生き返るようだ。
ワルサ峰はもうひと踏んばりで着き、ガイドブックには疲労が激しかったり、コー スに不安を感じたらここで引き返すように薦めている。
登山道そのものに不安を覚 える事もなく、その辺は年々整備が進んでいるようである。
笹の茎に残っている刈り跡は最近手を入れたばかりであり、地元の人が時期を見はからって入山していることを示しているものだ。
ワルサ峰から苗場山頂に湿原が広 がっている様子を見ることができるが、暑い陽射しがもろに頭上に注いで展望に長 く浸るのが耐えられないほどだ。
先を急いでやがて西赤沢源頭で水場の案内が左側 にあるのを視線にとどめ、ここは右側に進んで登り返すと坊主平という場所に着き、 木陰で休憩するにはもってこいである。
ここから佐武流山までダラダラと30分ほど歩いて着く。
はっきりした尾根道は山頂で終点を迎え、この先に樹林が茂っていなければ白砂山が指呼の間に見えている はずだ。
下りは同じ道をたどり、徐々にスピードが乗って早い時間に下山かと思ったが、そ のように問屋が卸さなかったネックは長い林道歩きである。
早朝4時15分から歩き出して下山したのが16時40分であり、12時間以上の登山は会山行では前代未聞であろう。
☆ コースタイム
405号線ゲート 4:15 林道ゲート 4:25 檜俣川渡渉点 6:15~6:45 物思平 7:50~8:00 ワルサ峰 9:10~9:15 坊主平 10:20~10:25 佐武流山 11:05~11:30 坊主平 12:00 西赤沢源頭 12:10ワルサ峰 12:45 物思平 13:40~13:45 檜俣川渡渉点 14:30~14:50 405号線ゲート 16:40
☆ 費 用
車両費 車利用者 ≒6500円 新幹線利用者 ≒2300円 宿泊代 一人 7300円

《 北アルプス 裏銀座縦走 ・ 槍ヶ岳 》
8 月24 日(金夜)~28 日(火)
メンバー (L)吉田 斉藤 八木 中出 原田 計5 人
8 月25 日(土) 晴れ
1 日目
-中出 記-
夜行バスは去年の山行で懲りていたので前日に電車で信濃大町に入る。
朝、駅 前で合流。 タクシーで高瀬ダムへ。
途中、七倉でゲートの開くのを待つ。高瀬 ダムを6時45分出発。
このダムは1年振り。 周囲の景色が懐かしい。
湖畔を しばらく歩いてからブナ立て尾根に取り付く。烏帽子小屋に着いたのが11時15 分。 地図のコースタイムは6時間、1時間半も短縮していた。
特に急いだ印象も なくやや意外に思う。烏帽子の登頂は止めて野口五郎の小屋まで行こうという話が 小屋につく前から出ていて休憩時に相談する。
烏帽子に登っていないのは自分だ け。去年、側を通って登れたのに登らなかった、「アンタがワルイ?」と、いうわ けで野口五郎へ。
小屋に泊まるには早すぎるし、今日先に進めば明日楽になる、というのが理由。
12時丁度小屋を出発。 小屋からは緩やかな登り下りの稜線歩き。 天気もよく、眼下に高瀬湖、後ろに烏帽子、船窪、針ノ木そして立山方面の山々、右手に赤牛から水晶に連なる稜線、左手には餓鬼、燕の山々を眺めながら進む。
まだ残っている高山植物の花々を見て楽しむ。
13時25分、三ッ岳頂上。 こんもりした特長のない山。
15時40分、野口五郎小屋着。 手前から野口五郎 らしき山は見えているのに小屋が見えない。 あの起伏の向こうと思ってもない、 ガッカリ。 若しかして小屋はないのではと妙な不安を抱いたりする。 それでも小屋はその先の起伏の陰に隠れてあった。
今回のこの登山、自分には大きな意味があった。
去年の船窪ー烏帽子コース、前日、夜行バスで眠れず疲れていたせいか とにかく登りがきつかった。なんとか小屋に着いたものの翌日は大きなアップダウ ンが続き疲労困憊状態。 自分ながらもう3000m級の山は無理、危険だと感じた。
とはいえ北アルプスの縦走は以前からの夢、70歳までは何とか歩きたい。 と、言う事で年が明けると今年夏の北アルプスに照準を合わせてトレーニングを始 めた。
丹沢で徐々に距離を伸ばしそして甲武信岳、金峰山、そして会の山行と清 水さんの個人山行に参加。
去年の事があるので直前まで迷ったあげく参加を決め る。
処が歩いてみて自分でも驚く結果となった。 4日間を通して登りの時に以 前感じた足が重い、かったるいという感じを持たなかったのだ。
小屋に着いても まだ歩けると思えたし、今までの山歩きで一番楽だったとも感じた。 70歳まで は大丈夫そう・・・・・・・。
この年になって人生訓を実感する。 「努力は報 われる!」 、だ。 笑われるかな?・・・・
8 月26 日(日) 晴れ
2 日目 
-齊藤 記-
朝食を済ませ外に出ると、真っ青な空に筋雲がたなびく素晴らしい天気である。
前方に槍ヶ岳が見え、その左雲海の上に富士山、八ヶ岳、浅間山まで見える。
すがすがしい風の吹く中5 時40 分出発。15 分程でなだらかな野口五郎岳山頂に立つ。
見渡すと、餓鬼、燕、大天井、常念、槍、笠、三俣蓮華、鷲羽、水晶、黒部五 郎、去年歩いた赤牛、薬師、立山、針の木、蓮華、鹿島槍、白馬連山まで見渡せる360 度の素晴らしい展望だ。
見飽きることのない眺めであるが先を急ぐ。白い砂礫 のなだらかな道を下り、左手の真砂岳に登り山頂を踏んで、水晶岳を目指す。
東沢乗越を過ぎると、崩壊したやせた岩稜となる。ウラジロタデが実を付け、イワツメ クサ、イワギギョウ、ウサギギク、ヨツバシオガマ、ミヤマアキノキリンソウ等の花が見られる。
水晶小屋直下の急登の斜面は、イブキジャコウソウ、ウサギギク、 ツメクサ、イワギギョウ、ミヤマクワガタ、ミヤマコウゾリナ等のみごとなお花畑 だ。
小屋は大きくは無いが、新しいきれいな小屋だ。ザックを置いて水晶岳に向かう。
最初はなだらかだが、山頂近くは岩の登りになる。夏の名残の花が続く。
クモマグサは丁度見頃だ。チョウノスケソウ、イワウメは残念ながら花柄を残すのみだった。山頂からは眼下に雲ノ平がよく見え、1 時間30 分の往復だった。
休憩をとって、鷲羽岳に向かう。ワリモ岳の直下をまき、岩の結構キツイ道を登り きると山頂だ。
赤い色の硫黄尾根、北鎌尾根を従えた槍の眺めが素晴らしい。 
この頃から空に雲が多くなってきた。左下に鷲羽池を見、下山にかかる。
はるか下に三俣山荘の赤い屋根が見え、石のゴロゴロした道を400メートルの急降下だ。 サブザックで登ってくるグループがいたが、さぞかしキツイことだろう。
三俣山荘に1 時30 分前に着く。皆で相談した結果双六小屋まで行くことになった。
出発前に水を補給する。500ccのミネラルウオーター500円で買うことに比べると、 無料の水はありがたい。
キャンプ場を通って三俣蓮華の登りに取り付く。
時間を短 縮するためにまき道を行く事になったが、三俣蓮華はピストンで山頂を踏んでくる。 お花畑の広がる山腹のコースを行く。花を楽しむならこのコースがおすすめだ。
チングルマの白い毛に夏の終わりを感じる。ハイマツの中の道を右に巻いて登って行 くと、広いカールに出る。モミジカラマツ、サラシナシヨウマ等の白い花が一面に 広がる斜面に、トリカブト、ミヤマキンポウゲ、クルマユリ、ハクサンフウロ、ウ サギギク等の花が彩りを添えて、素晴らしいお花畑が広がっている。
再びハイマツ の岩の道を登って行くと、稜線からの道に合流する。
そこから急降下で4 時30 分 過ぎ頃双六小屋に着く。
本日の行動時間11 時間の長い一日だった。
小屋の宿泊客 は3分の1位の入りで、ゆったりとした水も豊富な、充実した良い小屋だった。
8 月27 日(月) 曇り
3 日目 
-八木 記-
早朝から波瀾を含んだダイナミックな雲が山の稜線を這い回っていた。
夕べの話はまさに的を射たものであり、天気は下り坂に向かっているようだ。
前夜の打ち合わせですでに今日中に槍ヶ岳を下ることはメンバー全員周知である。
朝食を済まし、5時50分に双六小屋を出発した。直面するのは壁のよう迫っている山の斜面だ。
ジクザクに足を運び、山の陰から尖がったピークが現われて目前になると直登になり、すぐ先で意表を突いてそのピークを右側に巻いた。
その後広い尾根に出てジクザクに登ると間もなく樅沢岳である。
40分間の急な登りだったが、ここからは緩やかな尾根歩きである。
今では雲も山の稜線にのしかかるようにして空全体を覆い、稜線にかかる黒い雲の下から日の光がもれていた。
樅沢岳から下った先でお花畑が広がり、イワオトギリ、オタカラコウ、オニシモツ ケ、イワギキョウ、トリカブトなどが咲いていた。
登り返している台形状のピーク も途中で右側に巻き、周辺は右を向いても左を向いてもお花畑である。
ウスユキソ ウ、イブキジャコウソウ、ウメバチソウ、ダイモンジソウ、コバイケイソウ、ハク サンフウロ、ミヤマダイコンソウなどを次々に目にすることができ、登ったものだ けが浴する特典だ。
ウサギギク、ハクサンイチゲはまだ健在なものがあり、チングルマの花も一部に残っていたほどだ。
樅沢岳を後にしてからずっと対面していた槍 ヶ岳も尾根の連なりにすぎないピークに一度さえぎられて姿を隠し、そのピークを 右側に巻いて前方に立つと槍ヶ岳がいっきに迫ってきた。 
山頂直下の険しい尾根が槍ヶ岳に突き上げているのを真横から迫力を持って眺め ることができ、その後タカネナデシコが咲き乱れている急坂を下って登り返す頃に はお花畑は影がひそめ、登山道は石屑の細尾根に取って代わる。
天気は持ち直しているようであり、背後の鷲羽岳あたりでは厚い雲が切れて稜線が 覗き、ジャンダルムの方向では真っ白なガスが昇っては不意に晴れ渡ることを繰り返し、その度に澄んだ青空が目に入ってきた。
ガラガラした岩場を歩く頃になると 鎖も現われるが、足元の急な傾斜を警戒してのことだ。
千丈沢乗越は長い登りを迎 える鞍部の位置になり、エアリアのコースタイムに2時間と記して直下の登りにしては途方もなく長い。
槍岳山荘の建物を真上に見える頃では傾斜の度合いは生半可ではなく、こきざみに何回もジクザクに切って稜線を越した。
稜線の直前に槍ヶ岳の肩と記した標識が立ち、取るものを取あえず反対側に気が急いた。殺生ヒュッテ、 ヒュッテ大槍を足下にし、20年ぶりの光景を目の当たりにして気持ちがはずんだ。
歩いたことのある東鎌尾根の行く末にじっと目を凝らし、再現するように尾根筋を追ってみた。
水俣乗越の登り返しはひと通りの苦労ではなく、目線と同じ高さにあ る西岳から北側に遠く離れていく大天井岳に思いをはせた。稜線の南側にさも独立峰のように並んでいる三角形の山は常念岳である。
しばらく槍岳山荘の前の石敷の 上に座り、空身で槍ヶ岳に向かっていく登山者の後姿を見送った。
遠目から岩場に しがみ付いて必死に登っている様子であるが、両手をブラブラさせて下ってくる登山者もいるので人が一人通れるほどの道幅も岩峰に通じている所があるようだ。
岩峰の登山者がまばらになった頃を見はからって槍ヶ岳に向かい、5メートルほどの垂直のハシゴを最後にして登り切れば山頂だ。
周りの風景をそわそわと眺めただけ ですぐ下り、槍岳山荘の前に座ってまた長い休憩と決め込んだ。
20分後に槍岳小屋の前を出発してテント場の中を下っていき、鞍部の飛騨乗越から広い斜面をジクザクに下った。
丈の長いウラジロタデが山の斜面を埋め尽くし、赤みの帯びた花は 秋の気配を誘っていた。間もなく潅木の茂みに入り、今日の宿泊先である槍平小屋は1時間15分後に着く。
8 月28 日(火)曇りのち雨
4 日目 
-吉田 記-
夜中雨音がしていたが、朝はどんよりした曇空。降水確率も午前中50%と高い。
山を下りるまで天気がもってくれることを願って出発したが、石ゴロの歩きにくい道で気ばかりあせる。
滝谷の出合をすぎ、白出沢の出合手前で雷の音に首がすくむ。
行動中にも雷にあったらどう対処するかの話が出たが、これといった対策はなく幸運を祈るしかないということになった。
ここはもう林道に出てしまったので大丈夫 とは思うが、斜面を下ってる時でなくてよかったと思う。
ひたすら林道を歩き、穂高平小屋で休憩を入れ新穂高温泉に向かった。
バス停前の無料の温泉で汗を流し、 路線バスで松本に出、空いているあずさで早めの帰京となった。
☆ コースタイム
1 日目 25 日(土) 高瀬ダム6:45 (休⑥40) 烏帽子小屋11:15~12:00 三ツ岳1:25~1:35 (休 ②20)野口五郎小屋15:45
行動時間 9 時間
2 日目 26 日(日) 野口五郎小屋5:40 野口五郎岳5:55~6:10 真砂岳6:40~6:45(休②20) 東沢乗越8:13~8:20 水晶小屋9:10~9:20 水晶岳10:00~10:10 水晶小屋10:40~11:00 岩苔乗越11:30 ワリモ岳11:45~11:55 鷲羽岳12:23~12:35 三俣山荘13:23~13:40 三俣蓮華岳直下14:30 三俣蓮華岳14:45~14:53 三俣蓮華岳直下15:03 (休②20)双六小屋16:38
行動時間 11 時間
3 日目 27 日(月) 双六小屋5:55 樅沢岳6:33~6:38(休③25)千丈沢乗越9:41(休②18)槍 岳山荘11:00~11:45 槍ヶ岳12:05~12:10 槍ヶ岳山荘12:30~12:50 飛騨乗越1:00(休②20)槍平小屋15:40 行動時間 9 時間45 分 4 日目 28 日(火) 槍平小屋6:10 滝谷出合7:05 (休①10)白出沢出合8:10 穂高平小屋 8:35~8:45 新穂温泉9:20
行動時間 3 時間10 分
※(休②20)は、(休憩・休憩を取った回数・合計の休憩時間)を表す。
☆ 費 用
バス代 新宿~信濃大町 4700 円 新穂高温泉~松本 2800 円 タクシー代 信濃大町~高瀬ダム 2300 円/人 電車代 松本~新宿(回数券利用)4500 円 宿泊代 野口五郎小屋・双六小屋・槍平小屋 各1 泊2 食付 8500 円×3=25500 円 (槍平小屋は60 歳以上500 円引 証明できるもの必要)


※ お知らせ
1)♪♪ 新しいお仲間が入会されました。宜しくお願いします。♪♪ ・山田昌治さん 〒 Tel
2)受贈会報「木鶏」2007年9月号